2017年12月9日土曜日

『60万回のトライ』上映会+中村一成さん講演会の報告


 去る10月28日の土曜日、私たちは「朝鮮学校が育むもの」と題して、映画『60万回のトライ』の上映会と講演会を開催しました。
 
 当日は、小雨の降る肌寒い日でしたが、30名を超える来場者を迎えることができました。映画上映会に続き、監督と中村一成さんの講演、そして質疑応答、意見交換を行いました。

 『60万回のトライ』は大阪朝鮮高級学校のラグビー部を撮ったドキュメンタリーです。

「60万回」という数には、試合や練習で決めたトライ数のことではなく、いま日本にいる在日朝鮮人の数、約60万人の人生が示唆されています。そして、「転んでも、倒れても 負けられない想いがある」という映画のリード文は、ラグビーの試合の勝敗のことだけではなく、彼らが背負っている、また背負わされてしまっている様々な想いを象徴しています。

 映画自体ももちろん素晴らしかったのですが、監督の朴敦史さんが柔らかい口調で語られた、映画を撮るに至った経緯や撮影過程での様々なエピソードは、心に迫るものがありました。当日は、映画でカメラの視点となっていた朴思柔さんは体調不良のため残念ながら来場できませんでしたが、この映画が、韓国から病気療養のために来日していた朴思柔さんと大阪朝高ラグビー部との「出会い」を描いたものとして作られたことを聞いて、私は色々なシーンが腑に落ちました。実は、私は劇場公開時に観ていたのですが、もちろん映画自体に感動したのですが、同時に、少し監督の主観が入り過ぎているような気がしていたからです。しかし、それが三年のあいだに撮りためられた膨大なフィルムを再構成するときに、監督自身の経験を軸に、映画を撮る過程を感情も含めてそのまま表現するためだったと知り、もう一度そういう目で観てみたいと思いました。

 中村さんの講演は、京都の朝鮮学校襲撃事件の裁判の背後にある様々な葛藤や、今も続く被害など、本当に身につまされるお話しでした。いままさに係争中の「無償化」裁判も含めて、そこに至る多くの人々の苦しみと悲しみ、そして勇気には、裁判に関わる人たちへの尊敬と敬意とともに、やるせなさと怒り、悲しさなど多くの感情に心が揺り動かされ、私に今できることは何かという問いを突き付けられました。

 私は、今回あらためて主催者の一人として、このような素晴らしい機会をより多くの人に届けることができなかったことを反省しています。これまでの上映会や講演会でも、いつも「もっと多くの人にこの機会を経験してもらえたら」と思っていましたが、今回はとくに、このような大きな意義のある会をより多くの人に伝えたかったと、これまで以上に強く思いました。

 今後もこのような企画をできる限り作っていければと思っています。