2018年1月27日土曜日

立命館のガイドラインにレイシャルハラスメント事例が入りました

立命館大学「ハラスメント防止のためのガイドライン」の「ハラスメントになりうる言動事例」に「レイシャルハラスメントになりうる言動事例」がくわわりました。


2014年1月、立命館大学でのヘイトスピーチ事件をきっかけに私たちは活動をはじめました。事件の解決とは何か。その答えのひとつとして、レイシャルハラスメントの再発を予防する継続的な取り組みをはじめました。相談窓口を立ち上げ、「レイシャルハラスメントポリシー」と「解釈ガイドライン」(事例集)を作成し、大学に届けました。数年ごしではありますが、私たちの要望を一部実現する形になりました。

公開質問状に名前を連ねてくださったみなさん、事件後の集会に集まってくださったみなさん、シンポジウム・学習会・上映会に来てくださったみなさん、ヘイトスピーチ・ヘイトクライムと闘い続けている各地のみなさんの活躍と連帯のおかげです。

ご支援ありがとうございました。


私たちの活動の経過
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・事件とヘイトスピーチの拡散に抗して、被害者を指導する等した大学の対応を撤回させるため会を結成しました。100人以上の大学卒業生、学生、院生、教員らの署名を添えて立命館大学に公開質問状を提出しましたが、無回答でした。
・立命館大学内で、事件に抗議する集会を開催しました。
・立命館大学はレイシャルハラスメントへの対応に前向きでないことが分かったこともあり、会の活動を発展させて同様の事件を救済するために、「ヘイトスピーチ相談窓口」を開設しました。窓口は、立命館大学の構成員を対象に、レイシャルハラスメントの被害相談をうける活動を行い、キャンパス内で広報活動をやってきました。
・学習会や講演会、シンポジウムを重ねながら、他大学の取り組みにも学び、レイシャルハラスメントの「解釈ガイドライン」を独自に作成しました。
・立命館大学のキャンパス内で朝鮮学校を描いた映画の上映運動を行い続けてきました。高等教育無償化からの朝鮮学校排除にかかわる講演会も同時開催し続けました。このような活動をしていることを、教職員組合や大学の上層部も入っているメーリングリストで告知し、働きかけてきました。
・公開質問状の回答拒否を受けて、団交応諾義務があり大学が話し合いを避けられないように、非正規の労働組合(ユニオン)と協力して労組法に基づく団体交渉を続け、相談窓口」の「解釈ガイドライン」を提示しました。
・立命館大学のガイドラインの言動事例集に「レイシャルハラスメント」が記載されました。

2017年12月9日土曜日

『60万回のトライ』上映会+中村一成さん講演会の報告


 去る10月28日の土曜日、私たちは「朝鮮学校が育むもの」と題して、映画『60万回のトライ』の上映会と講演会を開催しました。
 
 当日は、小雨の降る肌寒い日でしたが、30名を超える来場者を迎えることができました。映画上映会に続き、監督と中村一成さんの講演、そして質疑応答、意見交換を行いました。

 『60万回のトライ』は大阪朝鮮高級学校のラグビー部を撮ったドキュメンタリーです。

「60万回」という数には、試合や練習で決めたトライ数のことではなく、いま日本にいる在日朝鮮人の数、約60万人の人生が示唆されています。そして、「転んでも、倒れても 負けられない想いがある」という映画のリード文は、ラグビーの試合の勝敗のことだけではなく、彼らが背負っている、また背負わされてしまっている様々な想いを象徴しています。

 映画自体ももちろん素晴らしかったのですが、監督の朴敦史さんが柔らかい口調で語られた、映画を撮るに至った経緯や撮影過程での様々なエピソードは、心に迫るものがありました。当日は、映画でカメラの視点となっていた朴思柔さんは体調不良のため残念ながら来場できませんでしたが、この映画が、韓国から病気療養のために来日していた朴思柔さんと大阪朝高ラグビー部との「出会い」を描いたものとして作られたことを聞いて、私は色々なシーンが腑に落ちました。実は、私は劇場公開時に観ていたのですが、もちろん映画自体に感動したのですが、同時に、少し監督の主観が入り過ぎているような気がしていたからです。しかし、それが三年のあいだに撮りためられた膨大なフィルムを再構成するときに、監督自身の経験を軸に、映画を撮る過程を感情も含めてそのまま表現するためだったと知り、もう一度そういう目で観てみたいと思いました。

 中村さんの講演は、京都の朝鮮学校襲撃事件の裁判の背後にある様々な葛藤や、今も続く被害など、本当に身につまされるお話しでした。いままさに係争中の「無償化」裁判も含めて、そこに至る多くの人々の苦しみと悲しみ、そして勇気には、裁判に関わる人たちへの尊敬と敬意とともに、やるせなさと怒り、悲しさなど多くの感情に心が揺り動かされ、私に今できることは何かという問いを突き付けられました。

 私は、今回あらためて主催者の一人として、このような素晴らしい機会をより多くの人に届けることができなかったことを反省しています。これまでの上映会や講演会でも、いつも「もっと多くの人にこの機会を経験してもらえたら」と思っていましたが、今回はとくに、このような大きな意義のある会をより多くの人に伝えたかったと、これまで以上に強く思いました。

 今後もこのような企画をできる限り作っていければと思っています。



2017年7月7日金曜日

一橋大学の事件、すべての大学に対する声明

全ての大学に対して、ヘイトスピーチから被害者を守るためのルール・差別禁止規定を設けることを求める声明


たちは、立命館大学において起こったヘイトスピーチ事件の解決を求めながら、「キャンパス・ヘイトスピーチ」に関する相談活動を行っているグループです(http://hatesoudan.strikingly.com)。

の間、一橋大学第21回KODAIRA祭における講演会企画をめぐって、ヘイトスピーチや個人情報の拡散、ヘイトクライムの示唆・扇動が見られたことを受け、全ての大学に対して、ヘイトスピーチから被害者を守るためのルール、差別禁止規定を設けることを求める声明を出すことにいたしました。

たちは、2013年に立命館大学で嘱託講師がヘイトスピーチ被害にあったことを契機に活動を開始しました。立命館大学が、その被害に適切な対応をしなかったため、公開質問状の提出や公開研究会の企画などを行って責任を問うてきました。また、独自に相談窓口を設け、その周知を学内で行うと同時に、「レイシャルハラスメント・ポリシー」および「解釈ガイドライン」のモデルを作成しネット上で配布するなどの取り組みを行ってきました(http://hatesoudan.strikingly.com/#_6)。

命館大学は、依然として公開質問状に対して回答はしておりませんが、ハラスメント研修において「レイシャル・ハラスメント」という言葉を使うようになるなど、少しずつ変化をしてきております。しかし、ヘイトスピーチから被害者を守るための明示的なルール作りは行われておらず、2013年の事件や今回の一橋大学における事件のようなことが再度起こった際に適切に対応できるのか心もとない状況が続いております。

えば、私たちの作成した「解釈ガイドライン」では、「学生組織やサークルなどが、民族差別を公言する発言者を呼び学内でイベントを開く」ことも「大学構成員によるインターネット上のヘイトスピーチ、あるいは大学構成員が被害者となっている インターネット上のヘイトスピーチを大学が知りながら看過・放置する」ことも 「レイシャル・ハラスメント」です。当然ながら、そのような行為に対して大学は迅速かつ断固とした対応をとる必要があります。しかし、そのような「レイシャル・ハラスメント」についての理解が共有されていなければ、仮に包括的な「ハラスメント・ガイドライン」において民族的・人種的な差別・ハラスメントに関する言及があったとしても、適切な対応はできません。それが私たちが「レイシャルハラスメント・ポリシー」および「解釈ガイドライン」のモデルを作成し、改めて今回ヘイトスピーチから被害者を守るためのルール・差別禁止規定を設けることを全ての大学に求める理由です。

たちは、自治を重んじ、言論や表現に対して特に開かれているべき大学であるからこそ、「大学の自治」「表現の自由」の名のもとに差別の扇動を行うもの、またそれを許すものたちに対して毅然とした態度をとる必要があると考えています。しかし現状では、何が大学として許すべきでない行為なのかに関する議論、認識の共有が避けられていると言わざるを得ません。そのためヘイトスピーチ事件が起こった際に、大学の対応が後手になり、加害者に毅然とした態度がとることができず、被害者保護ができないという状態が続いています。これでは言論の場としての大学の社会からの信頼は落ちるばかりです。
私たちは、全ての大学関係者に対して、ヘイトスピーチから被害者を守るためのルール・差別禁止規定を設けることを求めます。

「立命館大学ヘイトスピーチ事件の解決を求める会」一同

2017年2月5日日曜日

『蒼のシンフォニー』上映会+講演会が終了しました。


上映会、盛況に終了しました。
すばらしい映画でした。
また当日の様子などご報告いたします。

2017年1月22日日曜日

2017.2.4『蒼のシンフォニー』上映会+講演会

(転送転載歓迎)
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http://www.ritsumei-arsvi.org/ news/read/id/749

日時:2017年2月4日(土)14:00〜17:30
(開場 13:30)
場所:立命館大学衣笠キャンパス 充光館B1階301教室
主催:立命館大学生存学研究センター
共催:立命館大学コリア研究センター
参加:無料・申し込み不要

*会場の近くに駐車場はありませんので、 公共交通機関をご利用下さい。

開催趣旨
日本社会において朝鮮学校は教育基本法に定められる「学校」 と同等の地位をもっていません。2014年改正の「 高等学校等就学支援金の支給に関する法律」、 高等学校無償化政策からも、朝鮮学校は排除されています。 中等教育だけではありません。初等教育に関しても、 公的支援から排除され続けています。 2016年には京都朝鮮初級学校に保健室が設置されたと報道され ました。 子どもが手当を受ける場をつくることさえ難しい財政状況がありま す。全国各地で、 朝鮮学校を高等学校無償化から排除したことに抗する裁判が提訴さ れました。 朝鮮学校が公的支援から排除され続けることになった歴史的背景は どのようなものなのでしょうか。 なぜ朝鮮学校に対する差別的な政策があるのでしょうか。
朝鮮学校がヘイトスピーチやヘイトクライムの攻撃対象になってき たのはなぜなのでしょうか。

映画『蒼のシンフォニー』(監督:朴英二/出演: 茨城朝鮮初中高級学校 第58期生 2016年/日本/95分)は、茨城朝鮮学校の高校三年生が、「 祖国」 である朝鮮人民共和国を訪問する姿を描いたドキュメンタリーフィ ルムです。映画を上映後、 監督朴英二氏に映画の解説をしていただきます。また、宋基燦氏( 立命館大学映像学部/コリア研究センター、『「語られないもの」 としての朝鮮学校――在日民族教育とアイデンティティ・ ポリティクス』岩波書店,2012年.)に、朝鮮学校等、 在日朝鮮人教育運動の歴史・現状・課題を講演いただきます。 上映会・講演会を通じて、 日本社会における朝鮮学校の位置付けを考え、 議論する場をつくりたいと考えています。

プログラム

13:30    開場
14:00    開会の挨拶(中倉智徳)
14:05    映画「蒼のシンフォニー」上映(95分)
15:40    休憩
16:00    朴英二監督による解説
16:20    講演 宋基燦(立命館大学映像学部/コリア研究センター)
17:00    全体討論
17:30    終了
司会:中倉智徳( 立命館大学大学院先端総合学術研究科研究指導助手/ 生存学研究センター客員研究員)

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2016年5月9日月曜日

【京都新聞】「匿名の攻撃、炎上の恐怖 「ヘイト」と法規制」

私たちの立命館大学との交渉や取り組みは続いています。
丁寧にご報告ができておらず、申し訳ございません。

以下、京都新聞に記事が掲載されました。

http//www.kyoto-np.co.jp/top/article/20160507000120:
角でスマホを見る人がいると鼓動が早まる。後ろから刺されるんじゃないかと不安がよぎる。自分の名前をネット検索すると罵詈(ばり)雑言が並ぶのでネットを開くと苦痛を感じる。恐怖が澱(おり)のようにこびりついていた。
 立命館大准教授の金友子(39)は2013年、植民地支配から戦後の在日朝鮮人問題まで通観する講義を担当した。12月は京都朝鮮第一初級学校(当時)事件を題材にした。学生団体から授業でアピールしたいと要望され、許可した。金は成績評価と関係ないので書きたくない人は書かなくてよいと受講生に伝え、団体は終了間際の数分を使って朝鮮学校の高校無償化を求める文科省宛てカードへの協力を受講生に呼び掛けた。
 1カ月後、ネットでヘイトスピーチにさらされていると同僚に言われた。「単位と引き換えに署名を強要」など事実と違う話が拡散し、写真が貼りつけられた。「よく考えたら名前が『金友子』」「在日とは姑息(こそく)で卑怯(ひきょう)な生き物」。金は在日3世。名前も顔も知らない人が自分に憎悪を向け、民族を罵倒していた。ツイートの画面を印刷すると5センチほどの厚さになった。抗議が殺到した大学は「署名は任意で受講生の成績と無関係」とした上で「署名を求めたかのような誤解を与えた」のは「不適切」とおわびした。
 最近の学生は教員との上下関係を意識する傾向が強く、今回の件は配慮が足りなかった点があったという反省はある。だが、自分がネットで攻撃されて以降、他の教員や在日学生の間に朝鮮学校問題などを扱うのに戸惑いが出始めたと思う。匿名のネット言説が与える圧力。今も恐怖がよぎり、授業で発言する時に一呼吸置くようになった。
 自分の件で同僚や学生が実名を挙げてツイッターで反論し、大学の対応に抗議する文書を大学に送ってくれた。金自身、他の教員や研究員と一緒に学内にヘイトスピーチの相談窓口をつくった。「ひるんではいけない。大学人はネットの『匿名の空気』に抗(あらが)うべきだと思う」
■ネトウヨ多数は錯覚
 メディア論の大阪大准教授辻大介(50)は2年前、「韓国や中国に親しみを感じない」「靖国参拝、9条改憲支持」などを満たしネットで政治的議論をした人を「ネット右翼」と定義し、ネット利用者2347人から抽出した結果、ネット右翼は利用者の1・8%と算出した。「調査はネット多用者が多い調査会社の会員が対象。一般利用者が対象なら1%を切るだろう」
 辻はネット右翼がサイバー空間で多数派を占めるように映るのは「錯覚」と見る。原因に挙げるのが雪崩を打って議論が多数派に流れる「サイバーカスケード」という現象。「慰安婦」「尖閣」といった話題は少数が過剰に書き込み、見た人は「こんな大勢がバッシングしてる」という集団心理やノリで発言を加える。コピーがぐるぐる回って、ネトウヨの排外主義が圧倒している体をなす。さらに「炎上」への恐れがこの種の話題をタブー化させる。
 その結果、実態とは異なるゆがみを抱えるネット空間が、ヘイトスピーチや「嫌韓」「嫌中」にとどまらない多方面に及ぶ攻撃と、市民やメディアの自由な言論の萎縮を加速させる。
■大半が泣き寝入り
 3月27日、京都府・京都市に有効なヘイトスピーチ対策の推進を求める会がヘイトスピーチを含む人種差別的言動を禁じる条例案を公表した。案作成の契機は朝鮮学校の事件。裁判所は学校を被害者と捉えて賠償を命じたが、集団全体に向けた差別発言を不法行為とするのは「新たな立法なしにできない」とした。案は被害の実態調査と救済を重視し、人種や民族を理由に憎悪や差別をあおったり誹謗(ひぼう)中傷する言動を禁じる。さらにはネット被害者も含む支援措置や訴訟援助、差別行為者の名前の公表を盛り込んだ。「先進国なら当然あるべき法的対処がない」。集会で学者や弁護士が差別撤廃策を訴えた。
 OECD諸国でヘイトスピーチ規制法がない国は日米など少数。国連人種差別撤廃委員会は政府に法整備を勧告した。昨年、民進党などが対策法案を国会に提出、自民、公明両党も先月法案を出したが、罰則を設けない理念法と位置づけた。表現の自由への配慮からだった。
 会の共同代表を務める同志社大教授板垣竜太(43)は「憲法が保障する平等の立場で全ての人が生きられるかを同時に重視しなければならない。差別することが許され、『国から出て行け』『死ね』という暴言が野放しになっている社会では平等の立場で生きられない。被害救済も現行法で可能とする見方もあるが、裁判に訴えられるのはごく少数。大半が泣き寝入りせざるをえない」と話す。
■強大な対抗言論を
 憲法学者を中心に過度の法規制には、表現の自由の観点から「恣意(しい)的に運用され、政府に都合の悪い表現も規制される恐れがある」「国が『誤った思想』を認定し抑圧することには警戒的であるべき」など慎重な意見がある。根底には、国家が言論を弾圧した歴史も鑑み、「危険な言葉」と「危険でない言葉」を区別して「危険な言葉」を規制し、その判断を国家権力に委ねることへの懸念がある。
 辻は法規制に一定の必要性を認めつつも慎重派。例えば民族全体への罵詈雑言は政治的言説と境が曖昧なものがあり、法規制は正当な言論も萎縮させる恐れがある。何より、人は誤りうる存在で、何が正しいか前提にしない討議が私たちを正しい方向に導く、だから言論の自由は擁護されるという宗教戦争以降培われた知恵に、表現規制は反しかねない。「では方策は?」と問われると葛藤がよぎる。「正義にもとる行為への怒りは私も同じ。研究者の思考と個人の感情が分裂している」
 辻が重視するのは言論には言論で対抗する原則だ。少数のネット右翼が発言を積み上げてネット空間で存在感を得て、「在特会」のような団体も生まれた。今度はこちらが一日一言、こういうのバカだね、○○さん頑張れと書き続ける。3分あれば誰でもできる支援を広げて強大な対抗言論を築けないだろうか-。
=敬称略
◆今年、日本国憲法は公布70年の節目を迎える。安倍晋三首相は憲法改正に意欲を見せ、戦後日本が築いた立憲体制に変革を求める動きも加速する。国の根幹を形づくり、生活にも深く関わる憲法はどう扱われ、どう変わる可能性があるのか。表現の自由を切り口に考えます。(連載「KENPOU考」より)
【 2016年05月07日 21時10分 】

2014年12月30日火曜日

「キャンパスハラスメント規定の改定に向けた勉強会」報告

たち「立命館大学ヘイトスピーチ事件の解決を求める会」は、関西学院大学の金明秀教授を講師にお迎えして、11月30日に「キャンパスヘイトスピーチ相談窓口立ち上げ企画《キャンパスハラスメント規定の改定に向けた勉強会》」を開催いたしました。

勉強会の趣旨は、立命館大学のハラスメント規定および相談窓口をキャンパスヘイトスピーチ、レイシャル・ハラスメントにも対応できるものにすることを目標に、近年の大学における具体的な事例を共有した上で、各大学のキャンパスハラスメント体制を検討し、今後の課題を明確にしていくことでした。実際にあった被害をもとに議論を進めるため、勉強会はクローズドで行いました(もちろん被害実態については、当事者の了解を得たうえで匿名化し共有しました)。

まず「解決を求める会」から「ハラスメント規定と民族的マイノリティへの言及の調査報告」「事例と課題」「アメリカの事例と議論について」の3つの報告を行い、それに対して金明秀さんから「大学におけるレイシズム対策:レイシャル・ハラスメントの事例と防止規定」と題する報告がなされました。

論点は多岐に渡りましたが、特にヘイトスピーチやレイシャル・ハラスメントの場合、従来のハラスメント概念が想定していた加害-被害の関係にとどまらない事例への対応が求められることが明らかになりました。例えば、ハラスメントは権力関係を前提にしているため、部下から上司、学生(職員)から教員への加害は一般的に想定されてきませんでした。また特定の個人への被害が訴えの前提になっているため、授業内で多数の人々に向けられる差別的表現の被害とその訴えも想定されてきませんでした。しかし実際には、教員から学生個人のみならず、教員から多数の学生、学生・保護者から教員、職員(大学当局)から教員・学生に向けられたヘイトスピーチ、レイシャル・ハラスメントが起こっており、それに対して適切に対応することが求められています。

またその際に、規定を改定するだけではなく、相談窓口が適切に被害を理解し、規定やガイドラインと実際の運用に乖離が生じたり、判断基準が担当者任せにならないような取り組みが求められているという指摘もありました。

それから1月の事件に関しては、大学および大学構成員に対する虚偽情報に基づく学外での誹謗中傷や侮蔑等に対して、大学が取るべき対応やその内容についても議論になり、「企業のようにふるまうのではなく、学問の場としての責任ある対応が求められる」「大学が被害を放置することは加害にあたる」といった意見が出ました。
 
「解決を求める会」では、今回の勉強会の成果を踏まえ、具体的な規定改正案を立命館大学に対して提案していくとともに、大学におけるヘイトスピーチ、レイシャル・ハラスメントに関する議論を喚起できるような取り組みをしていきたいと考えております。今後とも、ご注目下さい。